千頭駅が奥大井の玄関として面目を一新し、その近くの白沢温泉が人気を博し接阻峡にも温泉と資料館が生まれ、アプト式の車窓から長島ダムの工事進行が一望できるなど、大井川の沿線は日々姿を新たにしている。
つい先日までは紅葉見物でにぎわった奥大井も静けさを取り戻すこれからが本当の旅のできる時であり、賢い旅を望む方々の探訪をおすすめした。
さて千頭駅は一新されたが奥大井地域の本当の課題はむしろこれからである。
致命的弱点は千頭、井川の旅館街が沈滞化したままであること、寸又峡を含め宿泊能力が過少なことで、これを抜本改革しないと本当の観光の伸びは期待できない。
シーズン中はJR金谷駅、大鉄、地元とも宿の問い合わせに困っており、最近は焼津などへ泊まってSLの旅をするコースも増えている。
井川はすばらしい所なのだが、、年間十万人の乗客が井川駅へ降りても食事をとる場所がない等、せっかくのてつどうが有効に活用されておらず、本村の旅館街、渡し船とバラバラなのが惜しまれる。
なかでも井川の渡しは喧嘩でも唯一の年中無休の公営渡し船ではないだろうか。貴重な観光資源であり、名物として売り出し活用したいものである。
最近は井川高原自然の家に泊まり、渡し船で井川本村へ渡り井川線のミニ列車、アプト式SLと回る素晴らしいコースも生まれているが、将来有望なコースである。
接阻峡温泉は申請の観光地で地元も熱心であるが、ダム水没による人口激減が致命的で、公営の青年自然の家など公的支援が必要となっている。
しかしなんといっても核となる千頭、井川の旅館の再活性化が奥大井観光の成否決するカギであり、今はせっかくの交通の便、鉄道という強みを生かしていない。
そのためには寸又峡を含め井川、接阻峡、千頭の温泉地化による最小三千人規模の奥大井温泉郷の形成が必要である。
新しく生まれ変わった千頭駅が本当に生かされるかどうかは、同地域の観光の今後に掛かっている。
(静岡新聞1992年12月15日夕刊一面「窓辺」より)
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