大井川鉄道はスイスの登山鉄道と姉妹鉄道になって15年を迎えた。
スイスの景色の美しさは一目で体感できるが、この20年ほどの経験からそれ以上に学ぶべき学ぶべき国であることが分かってきた。
付き合うほど味のある奥の深い国である。
スイスは国土、人口とも九州ほどの小国で昔より貧しさと戦い、近代においても列強の中を生き抜いて来た、したたかさがバックボーンになっている。
物質資源の無いことは日本と同じだが、人間の在り方は今や対照的である。
スイスの生活は今も質素で、しかも誇り高く、山国なのに過疎は存在しない。
パンも自製が多く、古い車を誇りとして乗り、麦は備蓄している。ドイツ人の堅実さ以上で最後は質素な方が勝つのではないかと感じる。
鉄道の設計もムダの無いことを誇りとし、日本のはムダが多すぎると内心さげすんでいる。
山国の車両は少しでも重量にムダがあると致命的なので航空機的設計、姉妹鉄道の最新型パノラマ客車は56席で自重わずか4トン、日本のバスの半分である。
姉妹鉄道はユングフラウの対岸にあるロートホルン鉄道で、アプト式急勾配をSLで昇るのは感動的である。
先般の旅ではトンネル内を消灯し、SLの音のみがこだまし、乗っていた子供たちのコーラスが響くという忘れられない情景に接した。
この鉄道は今年100周年を迎えたが、驚くことに100年前のSLをまだ現役で使っており、誇り高くピカピカに手入れされている。
大鉄は毎夏、必ずここを訪れるツアーを送り、一般の参加を歓迎しており、特に旅好きなリピータには好評を博している。明年も7月はじめに出発するのでおおかたのご参加をお待ちしている。
(静岡新聞1992年12月22日夕刊一面「窓辺」より)
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